お灸道具の揃え方~臨床家・鍼灸学生さん向け~

 

本格的に透熱灸でお灸療法をしたい方向けに、透熱灸で必要な道具の揃え方をご紹介します。なお、艾の捻り方や点火の練習の仕方は「お灸の練習方法」で紹介します。

 

ツボが正確に取穴出来れば無痕灸でも大きな効果がありますし、広い範囲の冷えは箱灸や棒灸、灸頭鍼等の温熱刺激の方が有痕灸よりも効率よく温められます。昨今は「痕が残る」「手が汚れる」等の理由から、台座灸や円筒灸といった無痕灸を主として灸療をされている先生方も多くなりました。

しかし、凝りのあるツボを砕くという点においては透熱灸の刺激は非常に効果的です。また、透熱灸は艾を自分で捻って艾炷の硬さ・高さを自由に変える事が出来るため、ツボの変化に応じた施灸が出来る点でも、臨床において一つの武器になると思います。

ここでは透熱灸をすえる時の道具の揃え方をご紹介します。

 

 

透熱灸で用意する基本的な灸道具は

①艾(点灸用艾)

②線香

③灰皿

④ライター

の4点です。透熱灸で使用する艾は皮膚を直接焼き切るため、より燃焼温度の低い点灸用艾を用意します。一般的には最上級艾と言われている艾です。例えば日本一黄金山(山正)、純和灸(佐藤竹右衛門商店)等。

 

あると便利な道具

 

臨床で透熱灸を使用していく上で、他にも便利な道具があります。以下は、基本的な4点の道具の他に、持っていると施灸がスムーズに行える道具をご紹介します。

 

 

【アルコール綿花】

消毒用のアルコールを染み込ませた綿花は、透熱灸の1壮目で艾炷が立ちにくい時に重宝します。同じ理由で灸リングを使用される方もいますが、その昔はツバを付けたりして艾炷を立たせていたそうです。

 

1壮目で艾炷が燃え尽きると、灰を取っても艾の成分が付着しているため、2壮目以降は何も付けなくても艾炷は立ちます。

他に紫雲膏やよもぎの煮汁、灸点墨を使う方もいます。

 

【灸点紙】

灸痕を気にする人向けにあると便利です。

灸点紙の裏はシールになっているので、ツボを決めたらその上に灸点紙を貼り、その上に艾炷を置いて施灸します。

 

熱感は緩やかなので、最上級の点灸艾よりすこし安価な点灸用艾を使用(最上級艾より燃焼度が若干高め)します。

 

【線香消し】

線香消しは、燃焼している線香を即時に消火出来、なおかつ往診時でもかさばらなくて便利です。

こちらは線香用の専門道具ですが、100円ショップの鉛筆キャップ等、円筒状の細い物で酸素を瞬時にシャットアウト出来る物であれば代用可能です。

 

写真の線香消しは灸法臨床研究会の例会で販売している他、神田の三景さんでも購入可能です(110円+送料)。

 

 

 

【線香延長器】

線香が短くなってくると熱くて手で持てず、1~2㎝位の短さになると廃棄する方もいらっしゃいます。

 

 延長器(写真上段は非売品)やクリップ(写真下段)等を使うと、最後の数mmまで使いきれて経済的です。

 

 

 

 

 

【灸点ペン】

学校に入ると購入する灸点ペン。施灸するツボに印を付ける時に使用します。

 

特に透熱灸で狙うツボは範囲としては数mm以下のピンポイントで施灸するため、取穴した場所に正確に施灸出来るように印を付けます。

 

 

 

【竹筒】

深谷灸法で使われる「灸熱緩和器」です。文字どおり、施灸箇所を竹筒で押圧する事で施灸時の透熱灸の熱感を緩和する狙いがあります。

深谷灸法で狙うツボはいわゆる「凝り(硬結)」なので、その凝りを砕くようなダイレクトの刺激が必要になるため、その刺激の緩和を目的として使用します。

当研究会の例会ではこの灸熱緩和器を使用して施灸実技を行います。ちなみに、ツボの周囲を均等に押圧する事は出来ませんが、母指・示指・中指で施灸部位を押圧して灸熱緩和をするやり方もあります。

 

【縄(紐)】

ツボの位置は〇〇から何寸、といった取穴法が一般的ですが、江戸時代発刊の『名家灸選』には口の幅や頭の周囲径を測ってツボ取りをする説明が多く見受けられます。その人の身体の大きさに合わせてツボ取りが出来ますが、慣れてくるとある程度ツボの位置が把握出来ます。